第113回学術大会がグランキューブ大阪を会場に,野首大会長のもと開催されました.

学会会場 グランキューブ大阪(大阪国際会議場)
黒川 清 日本学術会議会長メッセージ
「(社)日本補綴歯科学会第113回学術大会に寄せて」
第113回日本補綴歯科学会学術大会の開催に当たり、一言お祝いを申し上げます。
日本補綴歯科学会は、歯科補綴学はもとより、歯科医療全般についての研究を行い、健康科学と国民の福祉の向上に寄与されてまいりました。また、この度は、主務官庁の許可を受け、社団法人として幅広い公益活動を展開されるとお聞きしました。社団法人としてのスタートを心からお祝い申し上げますとともに、学会としての社会貢献事業の拡充にご期待申し上げます。
今回の学術大会のメインテーマは、「咬合・咀嚼が創る健康長寿」とお聞きしております。このテーマは、日本学術会議とも協働するものであり、日本学術会議におきましては、昨年12月に報告書として公表しております。
このように、学会と我が国科学者の代表機関である日本学術会議とが協働し、テーマを一つにして、また国民の福祉向上という共通の理念を掲げ、それぞれの社会的責務を果たすことは、我が国科学者コミュニティの発展に大きく寄与するものであることはもちろん、Science for societyの具現化にとっても重要であると考えております。
日本学術会議は、昨年の法改正を経て、本年10月には新しい体制を発足させ、政府・社会に対する科学的根拠をもった提言活動を一層充実させていくこととしております。優れた提言を行っていくためには、各学会の持つ知見を生かすとともに、優れた科学者の参加を得て、日本学術会議の審議を充実させることが必要です。このため、日本補綴歯科学会におかれては、見識の高い政策提言等のできる研究者の育成と科学者コミュニテイーの形成等にご尽力賜りたいと存じます。
また、一昨年9月には、他の領域に先駆けて、歯学系の70学会が集まり、日本歯学系学会連絡協議会が発足しております。日本補綴歯科学会も中心的メンバーとして活動いただいているところであり、ここを通じて、日本学術会議に対し、広く歯学発の優れた提言案をいただけるよう期待いたしております。
最後になりましたが、野首大会長、大山前理事長、赤川理事長はじめ関係者の方々のご努力に敬意を表しますとともに、今回の学術大会のご盛会を祈念いたしまして、私のメッセージとさせていただきます。
平成17年5月14日
日本学術会議会長 黒川 清

メッセージを代読する小林義典先生
特別講演
「おいしさと健康
講師:山本 隆(大阪大学大学院人間科学研究科)
座長:野首孝祠教授(阪大院)
第113回日本補綴歯科学会学術講演会の特別講演演者として大阪大学大学院人間科学研究科山本隆教授が「おいしさと健康−咀嚼と味覚の重要性−」について講演をされた.今回の学術大会のメインテーマである「咬合・咀嚼が創る健康長寿」に沿った魅力ある内容で,おいしく味わうということが生体反応として1)脳内物質の分泌促進,2)免疫能の向上,ストレスの低下,さらに5)QOLの向上につながるという楽しい内容の講演であった.
ややもすると我々補綴家は噛める補綴物を作ることに集中しすぎて,味覚や食感(テクスチャー)などまだまだよく考えていないとおいけない要素に目配りが十分できていないなあと実感させられた.また,先生はこれらのものと関連のある物質を科学的とられることの重要性も示されより,我々のよく味わえる義歯への挑戦を啓発されたものと考えた.(広報 佐藤博信)

山本 隆 先生

座長の野首大会長
理事長講演
「歯科補綴の未来価値」
講師:赤川安正理事長(広大院)
理事長講演を拝聴して
座長:平井敏博教授(北医大)
誠に力強いご講演でした。すなわち、今後さらに重要性を増す歯科医療の中で、咀嚼をはじめとする顎口腔機能の維持向上に中心的な役割を果たす本学会が国民の健康とQOLに確かに貢献してきたことを、科学的根拠とともに示されました。加えて、更なる本学会の発展と国民の利益のために、脳科学、睡眠学、再生医学、臨床疫学などを包含する新たな歯科補綴学の構築の必要性を訴えられました。それは国民の幸福にさらに貢献する学問となると、私には聞こえました。自然科学と人文科学を統合した、まさに健康科学でしょうか?社団法人となった今、本学会は社会に対して必要な情報を確実かつ迅速に伝達し、オピニオンリーダーとしての提言を行う義務と責任があります。そのリーダーのこの度の講演を、歯科医療関係者以外の方々を含めて、もっと多くの人に聴いて欲しいと思いました。必ずや聴衆は、歯科補綴学とその臨床の輝かしい未来とその価値を予測するでしょう。実に素晴らしいご講演でした。

赤川理事長

座長の平井先生
シンポジウムI
「歯科補綴における再生医療の方向性
座長:古谷野潔教授(九大院)
「骨再生医療の開発と補綴臨床への応用」
講師:春日井昇平(東医歯大院)
「骨再生の臨床―口腔外科の立場からー」
講師:高橋 哲教授(九歯大)
「補綴臨床における再生医療の必要性と展望」
講師:武田孝之先生(東京支部)
座長・古谷野 潔先生(九州大学大学院)から、本シンポジウムでは補綴領域における再生医療研究の将来に向けた方向性について考えたいとの発言に始まり、先端的な骨再生に関する研究知見と補綴臨床への応用の展望について春日井昇平先生(東京医科歯科大学大学院)、歯槽骨の移植・再建そしてディストラクションの臨床例を通して再生医療の歯科補綴への貢献について高橋 哲先生(九州歯科大学)、そしてインプラント治療・補綴臨床における再生医療の現状と期待について武田孝之先生(東京支部)の3名のシンポジストから講演を頂いた。
春日井先生から、薬物(スタチン)を用いた骨造成と、遺伝子(Plasmid vector)導入法を用いた骨再生のいずれもが、効果的で、安全で、低価格であることを話された。そして、再生治療法が社会に受け入れられるためには、治療効果、安全性、簡便性、低コストの4つの条件を満たす必要を説かれた。
高橋先生から、これまでの歯槽骨の再建では、ドナーサイトへの侵襲が不可避で、治療が長期間にわたり、治療後に骨吸収の発現などの問題を述べられた。そこで、新しい骨造成法として、骨にメカニカルストレスを加えて、大きな骨増生を得て、同時に軟組織の延長も得られるディストラクション(歯槽骨延長法)が示された。
武田先生は開業医の立場から、補綴介入による崩壊リスクの軽減を期待するインプラントが治療中、治療後に安全であってほしい。したがって、骨造成とともに、骨の保存・維持のために最適なメカニカルストレス(咬合の付与)を学会が示してほしいと要望された。 全体討論では骨増生においてtissue managementの重要性や新しい骨補填材の話題に広がり、意義あるシンポジウムであった。
(広報 田中昌博)

シンポジウムII
「咬合・咀嚼が創る健康寿命
(日本学術会議咬合学研究連絡委員会併催)
座長:小林義典教授(日歯大)
「咬合の生理学的解釈」
講師:山田好秋教授(新大院)
「小児の咬合咀嚼が創る健康」
講師:大東道治教授(大歯大)
「不正咬合の病態」
講師:相馬邦道教授(東医歯大院)
「高齢者の健康と咬合」
講師:赤川安正教授
昨年11月に開催された第1回公開シンポジウムに引き続いて,日本補綴歯科学会と日本学術会議咬合学研究連絡会との併催による第2回シンポジウムが開催された.開催に先立ち,日本学術会議・会長であられる黒川 清先生からのお手紙を大会長の野首孝祠教授(阪大院)が代読された.シンポジウムは基礎医学と咬合学研究連絡委員会を代表して山田好秋教授(新大院)が咬合の生理的解釈に基礎研究はどのような役割を持つのか,次に,臨床咬合学を代表して,日本小児歯科学会会長の大東道冶教授(大歯大)が母体の因子が胎児に及ぼす影響について.さらに,日本矯正歯科学会会長の相馬邦道教授(東医歯大院)が不正咬合に関係する歯根膜や咀嚼筋などの臨床生理学的な検証を話され,最後に本学会理事長の赤川安正教授(広大院)が高齢者の咬合の維持・改善に関する文献レビューと改善策を提示された.その後,ディスカッションに移り活発な意見の交換後,座長の小林義典教授(日歯大)が総括され盛会裡に閉会となった.
(広報 北川 昇)
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| 講師の先生方 |
シンポジウムV
「チェアサイドでの咀嚼機能検査法
座長:佐々木啓一教授(東北大院)
「寒天篩分法を用いた咀嚼能率測定法」
講師:築山能大助教授(九大院)
「混合能力を指標とした咀嚼能率評価法」
講師:馬場一美講師(東医歯大院)
「検査用グミゼリーを用いた咀嚼能率検査法」
講師:野首孝祠教授(阪大院)
「咀嚼回数を指標とした補綴治療の評価」
講師:河野正司教授(新大院)
歯科臨床では患者の咀嚼能力を的確に把握することが必要であり,社会への説明責任を果たす上でも咀嚼機能に関する検査を広く臨床に導入することが求められています.チェアサイドで簡便に行い得る咀嚼機能検査法の開発と早期導入を実現することは,咀嚼機能の回復と保全のための歯科補綴学を担う本学会の責務であり,そのため本学会ではこれまで学術大会課題口演として研究成果を積極的に求め,多くの知見を蓄積するに至りました.
そこで今大会では,これら検査の本格的な臨床導入を図ることを目的に,シンポジウムV「チェアサイドでの咀嚼機能検査法」を開催しました.演者には咀嚼機能検査法を開発・臨床応用されている各施設から代表的な築山能大先生(九大),馬場一美先生(医歯大),野首孝祠先生(阪大),河野正司先生(新大)を迎え,「寒天篩分法を用いた咀嚼能率測定法」(築山),「混合能力を指標とした咀嚼能力評価」(馬場),「検査用グミゼリーを用いた咀嚼能率測定法」(野首),「咀嚼回数を指標とした補綴治療の評価」(河野)のタイトルのもと、各方法の具体的手順,信頼性,相互の対応などについての報告を得ました.ディスカッションでは,さらに各方法の特徴,臨床導入の上で課題となる正常値設定の問題などについて詳細に検討し,いずれの方法も咀嚼機能を客観的に評価しうる方法であり,また検査データの信頼性も高いことが示されました。これらの結論を受け本シンポジウムでは,今回呈示された方法に十分な研究データを有する他施設の方法を含めた咀嚼機能検査の臨床導入を学会として推進することを確認することができました。
座長としては,各シンポジストの先生に感謝すると同時に,本学会が歯科界さらに社会へ向けて具体的な活動を早期に開始することを念じています.

講師の先生方

座長の佐々木先生
臨床教育研修
「補綴治療のスキルアップ」
座長:渡邉文彦教授(日歯大新潟)
「支台歯形成のための基本姿勢」
講師:鎌田政善教授(奥羽大)
「部分床義歯における咬合採得」
講師:大川周治教授(明海大)
「全部床義歯の咬合と安定」
講師:黒岩昭弘教授(松歯大)
座長の渡辺文彦先生の“時間も遅くなってきましたので一度体を伸ばしてリフレッシュ!!”という言葉に,会場内,皆腕を伸ばし,臨床教育研修はリラックスムードで始まりました.
奥羽大学の鎌田政善先生の講演は,“支台歯形成のための基本姿勢”という演題です.クラウンブリッジにおける支台歯形成の大切さ,換言すれば支台歯形成の良否によって支台歯の寿命が決まるといっても過言ではないという言葉は,説得力のあるものであり,身体的にも精神的にもストレスをかけないポジションでの形成という観点から,基本姿勢・グリップ・レストについて具体的な説明がありました.また,国内外の大学教育におけるシミュレーションについても説明があり,学生教育方法の1つとしてシミュレーションの導入が進むことが示唆されました.
続いて,明海大学の大川周治先生から“部分床義歯における咬合採得”の講演がありました.咬合採得時の問題点を@被圧変位性の相違,A歯根膜感覚による下顎の偏位,B咬合支持の有無,など具体的な例をあげた上で,手順に沿った対処法の説明があり,残存歯どうしが咬合支持を有しない部分床義歯症例では,ゴシックアーチトレーサーを応用することが,適切な咬合採得を適切に行うために不可欠であるというご報告でした.
続いて,松本歯科大学の黒岩昭弘先生から“全部床義歯の咬合と安定”という演題名で講演があり,再来を繰り返す総義歯患者における咬合の問題点について具体的な説明がありました.新義歯作製時の咬合採得法・試適法についても臨床術式の説明があり,上顎は全歯列を排列,下顎は前歯のみを排列し,下顎臼歯部はワックスで試適するという方法等も説明されました.
若手の先生方対象の本研修は,日常臨床において翌日から即応用できる講演内容であったと思います.(広報 細木真紀)
認定医研修
「補綴臨床の予後に直結する落とし穴
座長:細川隆司教授(九歯大)
「補綴装置と歯周疾患」
講師:土屋賢司先生(東京都開業)
「補綴物マージン露出に関する歯周病学的考察」
講師:宮本泰和先生(京都府開業)
今回の認定医研修では,臨床医として著名なお二人の先生方をお迎えし,補綴臨床医として身に付けていなければならない臨床診断・判断の具体的方策を御教示頂いた.土屋賢司先生には,生物学的幅径に関する考え方や歯周組織のタイプ(バイオタイプ)の診断に基づいた臨床的対応などについてお教え頂き,また,宮本泰和先生には,補綴治療にとって大きな問題点である歯肉退縮の原因を考察し、長期的に安定した歯周組織を作るための方法について,豊富な臨床例と共に臨床判断のポイントを具体的かつ詳細に述べて頂けた.
審美的な補綴装置を装着後,いかに長期的に良好な予後を維持するかという問題は,きわめて重要な臨床的課題である.このような補綴治療の予後に直結する落とし穴(ピットフォール)を議論することは,認定医のみならず多くの会員にとっても非常に有益なことであったと思う.国際会議場の第2会場がほぼ満員になり,立ち見が出たほどの盛況であったことから,本学会においてもこういった臨床スキル向上のためのクリニカルプログラムのニーズと重要性が再認識されたのではないかと思われた.(座長 細川隆司)

平成16年日本補綴歯科学会中堅優秀論文賞推薦論文
吉田 圭一 :
長崎大学大学院摂食機能回復診断治療学分野
Zirconate coupling agent for bonding resin luting cement to pure zirconium
American Journal of Dentistry 17(4)巻:17 頁: P.249 〜 P.252
川口 稔
福岡歯科大学歯科医療工学講座
各種浸漬媒体中におけるティッシュコンディショナーからのフタル酸エステルの溶出挙動
号: 3 頁: P.404 〜 P.411
113回課題口演コンペティション受賞者(近日UP)
113回デンツプライ賞受賞者(近日UP)

第112回大会デンツプライ賞受賞者
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