よくわかる補綴歯科講座(第5回)

 
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第5回
歯の治療が原因で,アレルギーになることがあるの?
すべての人が,必ずアレルギーになるなんてことは決してありません.ご安心下さい.
しかし,金属アレルギーと診断されている方やピアスをしたときに耳が腫れたことがあるという方などは要注意です.歯科用の金属に対してもアレルギー症状を起こす可能性があります.
しかし,一言にアレルギーといっても,花粉症やアトピー性皮膚炎などいろいろな症状があります.そこで,歯科用金属によるアレルギー症状を説明した上で,検査法,治療法を説明しましょう.
歯科用金属によるアレルギー症状は,口の中にのみに現れたり,全身に現れたり,出現場所も現れ方もきわめて多彩です.いくつかの例を示します.
口の中の主な症状
左の写真の青矢印の部分は粘膜が白くなっています.扁平苔癬(へんぺいたいせん)といわれるものです.
ほかにも,口内炎が多発したり,歯肉が白くなることもあります.
 
手や足の主な症状
手のひらやかかとに小さな発疹ができ,ひどくなると左の写真のように皮がむけ,痛みを伴うようになります.異汗性湿疹とか掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)といわれるものです.
 
全身の症状
全身に現れる症状は非常に多様です.アトピー性皮膚炎のような症状が現れることもあれば,左の写真のように発疹が出ることもあります.
 
 




検査はパッチテストという方法で行います.
左の写真のようにいろいろな金属の検査薬をつけたパッチテスト専用絆創膏を背中(あるいは腕)に貼ります.
はがした後の皮膚の反応で,それぞれの金属にアレルギーがあるかないか判定します.
検査は,(歯科)金属アレルギー外来のある大学病院(歯学部附属病院)やパッチテストのできる皮膚科等で行うことができます.
 
 
金属アレルギーだったら・・・・?
陽性と判定された金属を含む装飾品はなるべく使わない方がいいでしょう.
また,治療した歯の中にアレルギーの原因となる金属があるかどうかについては,歯科医院で相談されることをおすすめします.
一見,同じように見える銀色の修復物でも,その金属の種類は多岐にわたるからです. わかりやすく説明すれば,金の指輪が,純金であったり,18金だったり,メッキだったりするのと同じです.
基本的には,口の中に原因となる金属がある場合には,それを除去して,別の材料による治療を行います.しかし,どの金属にアレルギーをおこしているか,アレルギー症状の重篤さ等によって,それぞれの患者さんで治療法は異なり,場合によっては保険診療で使えない材料に置き換える必要があることもありますから,歯科医院でよくご相談ください.